家族の記憶と喪失、そして静かな再生を描いたソウルフルな旅
Mom Tudie『As the Crows』

 

Mom Tudie 『As the Crows』
https://lnk.to/mom_tudie_ATC

 

これまでの作品の中でも最もパーソナルで内省的な本作は、記憶や愛、そして“いなくなった人の気配が今も息づく場所”をテーマにしている。制作の多くは、ニュー・フォレストの外れにある亡き祖父母の家で行われた。世代を超えた対話のように音楽が紡がれ、懐かしさと温もり、新しい息吹が溶け合うアルバムに仕上がっている。

その家の庭には、夏の夕暮れになるとカラスが集まってくる木がある。幼い頃のMom Tudieにとって、その光景と鳴き声は日常そのものだった。その記憶がアルバムの中心に息づき、喪失と継承というテーマを静かに照らしている。深い愛で結ばれた祖父母の存在は作品全体に影響を与え、冒頭の2曲は祖父へ向けた手紙のような内容になっている。時が止まったように佇む家そのものが、彼にとって大切なインスピレーションの源になった。

電気ヒーターの音や手作りのキルト、足元で眠る愛犬Eddie。そんな穏やかな空間の中で、Mom Tudieは自分のルーツと改めて向き合った。祖父母の強い絆や、自身の恋愛の揺らぎを通して、愛のもろさと力強さを描いている。リード曲「Under Attack」では、新しい関係を築こうとしながらも心が追いつかず、世界に少しだけ立ち止まってほしいと願う気持ちを歌っている。

夕暮れ時に帰ってくるカラスたちのように、『As the Crows』は“帰ること”をテーマにしている。家へ、自分へ、そして記憶の中の温かさへ。リスナーの心に静かに寄り添い、聴き終えたあとも優しく残り続ける余韻。Mom Tudieの音楽がさらに深みを増したことを感じさせる作品。

 

Mom Tudie 『As the Crows』
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