来週7/12(水)に初のライブ音源『Live in Concert』をリリースする、オランダのソウル・ジャズ・フュージョン・バンドTristan(トリスタン)。あのインコグニートの総帥ブルーイやTOTOのスティーヴ・ルカサーらも称賛する、圧倒的実力を誇る彼らの歩みを振り返る。
彼らが世間に知られるようになったのはデビューアルバム『Full Power』をリリースした2014年頃からだろう。”デビューアルバム”とはいえ、一般に「アシッド・ジャズ」と認知されるジャンルと円熟味すら感じさせる卓越した演奏力で、新人の華々しいデビューという趣とはまた違った受け入れられ方をされていた。それもそのはず、蓋を開けてみればこの時既にバンド結成後12年の歳月が流れ、メンバー各々がヨーロッパの音楽シーンにおいて欠かすことが出来ない「音楽職人」としてのキャリアを築き上げたドリームチームのようなバンドであった。
ではその注目のメンバーを改めて紹介しておこう。
リード・シンガーが紅一点となるイヴリン・カランシー。アムステルダムの学校で演劇やダンスを学んだ彼女は、ミュージカル『レ・ミゼラブル』の舞台に立ち、ジョセリン・ブラウンなどのバック・シンガーを務めたという経歴を持つ。芯の強さと華やかさを兼ね備えた歌声を聞けばその経歴も納得だ。ドラムスは、ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・ミュージックで教鞭も執っているというドイツ人のセバスティアン・コーネリセン。キーボードのコーエン・モレナールは作曲家／プロデューサーとして世界を股にかけて活躍。ベースは様々な大物と共演し楽器演奏のみならずミキシングなども手がけるフランス・ウォリンク、ギターも数々の大物達と共演してきたコロンビア出身でオランダ育ちのガイ・ニッケルズ。
メンバー全員がプロデュースからソングライティングまで難なくこなす強者ばかりのこのバンドにおいては当然アルバムのトータルプロデュースは彼ら自身。先に紹介した通り2014年にはデビューアルバム『Full Power』をリリース。ファンキーさ、ポップさ、そしてバンドならではのグルーヴがリッチに詰まったこの作品は高く評価され、TOTOのギタリストであるスティーヴ・ルカサーは「素晴らしき70年代を現代に呼び起こす最高の一枚だね」と絶賛のコメントを寄せた。
オープニングを飾る”Keep On”、続く”Moontune”で序盤からとびきりソウルフルで、かつジャジーなサウンドを展開し、リスナーを一気に魅了する。その痛快なグルーヴに、聴けば思わず身体が踊りだすに違いない。また一方で、程良いルーズさの中に漂う異国情緒が心地良いインスト”Skip This”や、温かなホーンの響きと重なり合うエモーショナルな歌声が印象的なバラード”Butterfly”など、サウンドの多彩さもさすがの実力と言えるだろう。
2作目となる『2nd Phase』を経て、2016年には3rdアルバム『Lifestyle』をリリース。活動開始後毎年アルバムをリリースし急速にペースをあげながらも、全く音楽性がブレることなく、そして決して魅力が薄まることなく新しい作品を届けてくれる彼らだが、それが出来るのも各々が培ってきた経験値とセンスの賜物だろう。
懐かしい時代に想いを馳せるようなグルーヴが心地良い”Let Me Breathe”や柔らかな温もりに包まれる壮大なバラード”Sprit One”をはじめ、この3rdアルバムに収録された楽曲はいずれも上質かつフレッシュで、強い推進力に満ちている。また彼ら自身の「Rock and Roll」な生き様、音楽に燃やす情熱、そして平坦ならざる人生への深い愛情が生々しく綴られたタイトルトラック”Lifestyle”は、夢を諦めない全ての人にとって自分自身と重ね合わせることのできる特別な一曲となるはずだ。
そんな3枚の過去作から今回リリースされる『Live in Concert』で披露されたのは13曲。
[TRACK LIST]
01. I’ll Be Around (『Lifestyle』収録)
02. Keep On (『Full Power』収録)
03. Lifestyle (『Lifestyle』収録)
04. Lost (『2nd Phase』収録)
05. Riverflow (『Full Power』収録)
06. Love Leads The Way (『Lifestyle』収録)
07. Let Me Breathe (『Lifestyle』収録)
08. Butterfly (『Full Power』収録)
09. Feet Back on the Ground (『Lifestyle』収録)
10. Odds to Win (『Full Power』収録)
11. Trouble (『Lifestyle』収録)
12. New Beginning (『Full Power』収録)
13. Moontune (『Full Power』収録)
影響を受けているであろうタワー・オブ・パワーやインコグニート、ブラン・ニュー・ヘヴィーズらのライブにも共通するが、意図的に熱量をやや抑え緻密にグルーヴを編み上げていくかのようなスタジオ音源とは大きく異なり、エネルギッシュでドライブ感溢れるライブならではのグルーヴを体感出来るだろう。
Youtubeにはスタジオライブの様子などもあがっており、少しこのライブ版『Live in Concert』の空気感を感じてもらえるだろう。
しかし、これを聞いてしまったら「来日公演はいつだろうか」そう期待せずにはいられない。
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