ニューヨークを拠点に活動を展開するインディー・ソウル/R&Bバンド「The Rooks」の一員であり、その圧倒的なパフォーマンスで「現代版Prince」との呼び声も高いシンガーGarth.(ガース)。ソロデビュー作『Human Nature』の日本盤を7月25日にリリースし、未来の音楽界をリードしていく逸材であるGarth.に、その音楽的なバックグラウンドや交友関係について聞いてみた。

Garth. Interview

-Garth.というアーティスト名は本名から取られたものでしょうか?

僕のフルネーム、Garth Michael Taylor, Jr.を言いやすくするために短くしたんだよ。ピリオドを付けたのは他の「Garth」達と区別するためさ。カントリー歌手のGarth BrooksやWayne’s World(1992年に公開されたアメリカ合衆国の映画)の Garthとかね。他にも有名な南アフリカのミュージシャンのGarth Taylorもいて、よく彼のファンから間違ってメッセージが来るんだよ(笑)。このピリオドはつまり「Garth BrooksでもGarth Taylorでもなく、ましてや父のGarth Sr.でもない。僕が Garth.だ」っていうみんなへのメッセージみたいなものだね。

 


※Garth.の元に間違えてファンレターが届くというGarth Taylor

 

-メリーランド州ロウレル育ちということですが、ご両親のことやどんな音楽を聞いて育ったか教えてください。

僕の母はカリブ海の小国グレナダ、父はジャマイカの出身で二人とも十代の時にアメリカに移民としてやってきたんだ。生活は決して楽ではなかったけど、そんな中でも両親はいつも僕のクリエイティブ性を育てようとしてくれていたね。父は空軍兵士で礼儀にはとても厳しくて、母は逆に陽気で気さくな人だよ。父は基本的にレゲエが好きで、Four TopsやChi-Llitesなんかもをよく聴いていたけど、僕が音楽にのめり込むきっかけになったのは教会なんだ。教会で聴いた音楽が持つヴォーカルの力強さやハーモニーの美しさ、そしてそこに隠れているジャズの要素にとても魅力を感じたのさ。ゴスペルには、様々な感情や荘厳な世界観、その技術やソウルそのものとかいろんなものが埋め込まれているんだ。そういったものをずっと聴いてきたから今の僕の音楽にはそういったものが強く表れているし、これからもそんな音楽を作っていきたいね。

 

-シンガー/プロデューサーに加えて、マルチ・インストゥルメンタリストでもあるそうですが、どんな楽器を弾くのでしょうか?

弦楽器以外のいろんな楽器をちょっとずつやるよ。フルートやフレンチホルン、たまにピアノやトランペットも演奏していたね。ホルンは歌うことよりも得意だったかもしれない。でもシンガーとして活動している時は歌うことに集中したいから、その間は楽器をやらないようにしているんだ。

 

-歌に関してはコネチカット州の名門ウェズリアン大学在学中にアカペラ・グループ「Wesleyan Spirits」に所属していたそうですね。どんな曲を歌っていたのでしょうか?

Boyz II Men、John Legend、The Temptations、The Beatlesといった現代ポップスをメインにやっていたよ。もちろん一般的な合唱曲や、うちの大学が「Singing College of New England」(=ニューイングランドの歌う大学)って言われていた時代に歌われていた伝統的な19世紀頃の古い曲もやっていたけどね。

 

-大学在学中にThe Rooksというバンドに加わったようですが、このバンドに加入した経緯を教えてください。

The Rooksのメンバーと出会ったのは僕が大学3年生の時で、一緒にWesleyan Spiritsに所属していた友達が紹介してくれたんだよ。その後4年生の時に彼らとバンドを結成して、僕が21歳の時にキャリアを築くためにみんなでニューヨークに移ったんだ。今も活動していて、早ければ2019年の初め頃にアルバムをリリースする予定だよ。

 

 

-バンドを経てソロ活動を始められてますが、ソロになってみて活動や制作において違いはありましたか?

ソロでやるっていうことはつまり、全ての責任を負わなくちゃいけないってことなんだ。クリエイティブ面はもちろん、権利関係や流通なんかの面でもね。もし僕が何もしなかったら、何も得ることはできない。歌詞、メロディー、ハーモニー、ギターパート、シンセサイザーパート、イントロ、アウトロの全てを他の誰かが作ってくれるのを待ってる訳にはいかないのさ。その全部を僕がどうやるか、責任をもって判断をする必要があるんだ。だから凄く集中したし、そうやって全て自分でやること自体初めてだったから、とてもエキサイティングな体験だったね。

 

-“Human Nature”はブルックリンにあるShifted Recording StudioのMike Irishとの出会いがキッカケになって生まれたそうですが、楽曲が出来上がったプロセスを改めて教えてください。

先にミーティングをする機会があって、そこでMikeとコラボすることが決まったんだ。始めに、僕らはお互いお気に入りの曲を3曲ずつ持ち寄うことにしたんだよ。その中にはGabriel Garzón-Montano(SWEET SOUL RECORDSからアルバム『Bishouné: Alma del Huila』をリリース)の曲もあったね。そうやってどんなものが作れそうか探っていったんだ。

そうして方向性が決まったら、最初の1時間でまずはドラム、キーボード、ベースラインを重ねていって、その中からベストな楽曲の基本構成を完成させたんだ。Mikeが作ったサンプルの音源に生のドラムの音を重ねるためにドラマーのJay Elliotも呼んだね。二人とも出来上がった基本構成に本当に興奮したよ。その後、Mikeがコーヒーを飲んで休憩している間、僕が歌詞とメロディーに取り掛かって、その数時間後にはもう最初のヴァースとコーラスを書き出して、次の日の晩にはヴォーカルとハーモニーは書き終わっていたかな。翌週にもう一回会って、ヴォーカルを足したり、他の楽器のパートを練り直したりしながら曲のミックスとマスタリングをして終わりさ。出来上がるまでにそんな時間はかからなかったね。

 

 

-このアルバムに収録されている曲はいつ作られたのでしょうか?

今回の収録曲は2015年頃から作り始めたんだけど、当時はソロでやるかどうかはあまり考えてなかったんだよね。友達のCasey MQっていうトロントのミュージシャンと一緒に曲を書き始めたんだけど、どうやってリリースするかは特に決めてなかったんだよ。でも結局その時彼と一緒に作った “Erika”は今回のソロデビューアルバムにも収録される大切な曲になったよ。

 

 

 

-影響を受けたアーティストは誰ですか?

Beyoncé、Solange、Frank Ocean、Prince、Michael Jackson、Whitney Houston、Mariah Carey、Jazmine Sullivan、Naughty Boyあたりだね。ライブでカバーしたいと思っている曲もあるくらい大好きなアーティストたちさ。

 

-90年代のR&Bと80年代のポップスの要素を強く感じたのですが、やはりこうした人たちの音楽を参照しているのでしょうか? できれば、どんな部分を参照したか教えてください。

うーん、「ここだ!」って言えるような歌詞やメロディーを挙げるのは難しいね。でも何曲かは今挙げたアーティストの音楽のテイストを意識して作ったよ。例えば、“Past Life”は間違いなくFrank Oceanの影響を受けていると言えるだろうね。彼の音楽はモダンなR&Bなんだけど、ユニークなサウンドを多く使っていて、ヴォーカルのトーンが変わったり音域も広くなったりするんだよ。そのスタイルからは大いに影響されたね。“Erika”は「Princeが楽しんでくれそうな曲を作ろう」って思って作ったんだ。歌唱面でいつも意識しているのはBeyonceだね。彼女はいつも僕の歌にとってのインスピレーションの源さ。彼女は自身が関わっているプロジェクト全てに対して常に全力なんだ。

 

-今回のアルバムには様々なソングライター、プロデューサー、演奏者が参加していますが、どんな繋がりのある人たちなのでしょう?

何人かは大学で出会った仲間だし、The Rooksを通して知り合った仲間もいるね。中でもDonnie Spackmanは制作の大部分を担当してくれたよ。 僕はみんなで一緒に何か作業をしていく中で気になった人と特に親しくなることが多いんだ。だから気づけば僕の周りにはプロフェッショナルばっかりなのさ。彼らと一緒に仕事ができることに本当に感謝しているよ。みんなでアートを創り上げ、それを成長させていくのは素晴らしい経験だからね。

 

 

-日本盤にボーナス収録される4曲がオリジナルのアルバムに収録されなかった理由を教えてください。

ただ単純に出来上がっていなかったんだよ(笑)。オリジナル盤に収録された8曲は始めから一つの作品にするつもりでプロデュースしていて、全ての曲に全力を尽くしたかったから全体の曲数を絞っていたんだよね。でもこのアルバムの日本盤リリースに向けて準備しているときに何曲か足したくなったんだ。そこで、最近知り合ったMikos Da Gawd、Doug Bogan、Spencer H、そしてMammal Dapの4人のアーティストにボーナストラックの制作を頼むことにしたのさ。

 

-最後に、アルバム『Human Nature』の音楽的/リリック的にこだわったことを教えてください。

サウンド的には、ソウルやR&Bの要素をもっと近代的にしたかったんだ。音をよりディープにしたり、直感的な組み方をしたコード進行を減らしてみたり。あと、自然な感じの音をそのまま残しつつ、そこにわざとアクセントとして不自然な響きを足すようなこともしたね。リリックに関しては「関係性に対する思い」をテーマにして書いたんだ。それはロマンチックな恋愛である必要はなくて、友達との関係や特定の人への深い思いだったりすることもある。そして真の完璧な関係ってどんなものなのかって想像する。そうやって自分自身を周りの人との関係性で定義する、その行動こそが『Human Nature』なのさ。