音楽不況の真っ只中から始まり、音楽ビジネスにおいては大きな転換期を迎えめまぐるしい速度でその形態が変容し続けてきた日本のテン年代音楽シーン。激動とも言えるこの9年だが、日本においては若くクリエイティビティに溢れるアーティストやレーベル、クルーが多数生まれ、しかもそれぞれがシームレスに繋がりながらアンダーグラウンドでシーンを形成しオーバーグラウンドへと進出をし始めている。

そんなテン年代音楽シーンのシンガーソングライターとして欠かせない存在がMALIYAだ。2018年の1stアルバム『ego』に続いて、2019年4月にEP『unswyd』をリリースすると、その普遍性と先進性を伴った楽曲と強いメッセージ、鮮烈なビジュアルで早耳な音楽ラバーたちから称賛を集めている。

そんな彼女が、2019年5月25日に代々木上原のOPRCTで行われる「JAZ KARIS Live at OPRCT」に出演。イギリスからJaz KarisとRuby Francisの二人のシンガーソングライターを招いて行われる本公演において、日本人唯一の出演となるMALIYAに最新作『unswyd』、海外や日本のシーンについて、そしてOPRCTでのライブについて聞いた。

 

芯のある強い女性像を描く新作『unswyd』

-前作『ego』ではクラシカルなバンドサウンドから、The Internetなどを思わせるフューチャーソウルまで幅広く収録されていてポテンシャルを大きく感じさせた作品だったのに対して、今作『unswyd』は後者をさらに進化させたトラック感の強いサウンドになっています。サウンド面ではどういったコンセプトで制作したのでしょうか?

『ego』では幅広く作ったのに対して、今作『unswyd』は全部打ち込みにして、もっと私のコアな部分を見せたいなと思って作っていきました。サウンド面では「とにかく新しいことをしたい」というのが漠然とあったのでそこを突き詰めていった感じです。MALIYAとしてまだやっていないことはもちろん、もっと広く日本の女性シンガーがまだやっていないことをしたいっていうのがあったので。

 

 

 

-日本の女性シンガーがまだやっていないこと、となると難しい挑戦だったと思うのですが、それを実現するために影響を受けたアーティストや楽曲などはありますか?

特にこの人、この曲っていうのはないですが、制作時はUK、USのR&BやHipHopばっかり聴いてたように思います。

 

-そのUK、USのR&Bに負けないスケール感のある楽曲が並んだ中で、MALIYAさんはそれぞれの楽曲に対してどう歌うべきかというアプローチが極めて的確だなと感じました。今作においては自身のヴォーカルアプローチをどのような意識でされたのでしょうか。

意識的にこうしようと決めて歌ったりはしていないですね。ただメロディーや言葉、ビートに対して気持ち良いところを無意識に探って歌ってるんだとは思います。

聴いていてどうすれば言葉が伝わりやすいのか、声も楽器の一つとしてどう歌ったらビートと混ざるのか、といったところは意識というより、感覚として重要視してるところではあります。

 

 

-前作『ego』はテーマを持たせず作りたい曲を作ったそうですが、今作は「unswyd」=unswayed、つまり感化されない、ブレないというタイトルに沿った曲が一貫して並んでいますよね。

そうですね。今回の『unswyd』では、「芯のある強い女性像」っていうのを一貫したテーマとして作っています。強いというのも、ただ力が強いとか泣かない、とか表面的な部分ではなく、内面的に一本筋の通った芯のある女性、というのを表現したかったんです。

 

-「Drop me a line」のビジュアライザーも「I’m Ready」のMVも、楽曲の世界観をより強く提示する作品に仕上がっていますよね。アルバムジャケットやアーティスト写真も含め、ビジュアル面からも今作のテーマを強く感じました。

曲とテーマが出来てから、ビジュアルもちゃんとリンクするように意識してMVやジャケットの制作をしたので、それぞれ今作のコンセプトが出ていると思います。今作のコンセプトである「芯のある強い女性像」という大筋のテーマに加えて、「女性」「日本人」「シンガー」という私のアイデンティティをもっと色濃く表現したいなと思って、かなりこだわって作ったので。

 

 

「壁」がなくなるシームレスなシーンへ

-上述のビジュアライザーとMVを監督している國枝真太朗さん主宰の「Pitch Odd Mansion」や、The Internet “La Di Da”のカバーを一緒にされていたWONKらを擁する「epistroph」、前作でフィーチャーしていたRyohuさんらによる「KANDYTOWN」など、ヒップホップ/R&Bにおいて同時発生的に出てきたクルーたちが自然と横に繋がりを持ってシーンを形成していますよね。MALIYAさんはまさにそのシーンに常に名前が上がり続けている一人ですが、このシーンの現状や行く末についてどのように感じていますか?

単純に音楽にだけフォーカスしても、シーンとして面白くなっていくと思うし楽しみですね。ジャンルの壁はどんどんなくなっていくと思うし、海外との時差や距離の壁みたいなのも体感としてなくなっていると思います。もっと言えば音楽だけじゃなく、ファッション、映像などのアートのクロスオーバーも期待できるし、可能性しかないと思ってます。

 

 

-「壁」というところでいくと、MALIYAさんの楽曲では英詞と日本語詞が登場して、それぞれの語感の良さをいいとこ取りをしながらシームレスに行き来していますよね。そのセンスも含め将来的に海外での音楽活動も視野にいれているのでしょうか?

特に活動場所を海外で、とか日本で、とか断定してる訳ではないですが、音楽を作ってる上で常に聴いてる人が日本人だけじゃないという意識はしていますね。だから、どの国の人が聴いてもなるべくどんな歌をどんな感情で歌ってるかわかるようにしたい、というのはあって。もちろん日本語だけの曲も作る時もありますが、そういう時は歌い方やメロディー、時にはMVでそれを表現できたら良いなと思って作っています。

その結果として歌を聴いてくれて、何かに共感してくれて、日本だけじゃなく世界でも友達やファンが増えたら最高ですよね。

 

-MALIYAさんが今海外で注目しているシーンや、アーティストなどはいますか?

個人的にスペインのR&B、HipHopシーンに注目してます。今年のCoachellaにも出演していたROSALIAもそうだけど、面白くてかっこいい、新鮮だけどルーツは感じるっていうアーティストを聴いたり見たりすると痺れますね。

 

 

-今回5/25にご出演いただくOPRCTでの公演には、イギリスのロンドンからJaz KarisとRuby Francisが来日します。イギリスで好きなアーティストやそこに息づくシーンの印象はどうでしょうか?

昔からUK出身で好きなアーティストはいっぱいいて、Amy Winehouseもそうだし、Jamiroquaiもそう。最近ではNAOやラッパーのJevonも大好きです。すごく音もビジュアルも洗練されたイメージがあって、アートにもこだわっている印象ですね。個人的にすごく好きだし、影響も受けています。

 

-Jaz Karis、Ruby Francisについてはご存知でしたか?

Jaz Karisは確か「A COLORS SHOW」で初めて見て、その時も「良い声だな」って思ってたんですが、今年の3月にNAOのレーベル「Little Tokyo Recordings」からシングル“Doubt My Love”を出して、その曲が好きで聴いてたので今回の話が来た時すごく嬉しかったです。

Ruby Francisは、DMで少しだけやりとりした時にまだ会ったことないけど、良い人だろうなっていうのが伝わってきて(笑)、人柄が音楽に出てるなって思いました。二人とも会えるのが楽しみです。

 

 

-今回のライブにおいてはどのようなパフォーマンスに期待をしてほしいでしょうか?

今回私はDJセットなので、トラック、ボーカルがダイレクトに届けられるかなと思います。音源よりも良いものを魅せられると思うので、音源聴いてきてみて欲しいです。

私とJaz KarisとRuby Francis、3人とも大きく分けると女性シンガーだけど、それぞれまた違う個性があるので、その違いもぜひ楽しんでもらえたら嬉しいです。

 

MALIYA 

https://maliya.jp/

日本をベースに活躍するシンガー/ソングライター。2018年2月、ソウル、ジャズ、ポップスを昇華したハイスペックなサウンドが詰まった1st アルバム『ego』をリリース。以降、ジャンルを越えた客演オファーをこなしつつ、2018年11月にはThe Internetの楽曲“La Di Da”をWONK feat MALIYA名義でオフィシャルカバー。2019年4月にはKai Takahashi (LUCKY TAPES) やMONJOE (DATS) をproduceに迎えた2nd EP『unswyd』をリリースするなどシーンに欠かせない存在感を放っている。

 

LIVE INFORMATION

公演名: JAZ KARIS Live at OPRCT

日程: 2019.05.25 sat

時間: 17:30 (open) / 18:30 (start)

会場: OPRCT (渋谷区上原1-29-10 OPRCT)

料金: ¥4,000 (adv) / ¥4,500 (door) + 1 drink

出演: Jaz Karis / Ruby Francis (O.A.) / MALIYA (O.A.)

お問い合わせ: info@sweetsoulrecords.com TEL 03-6416-8690