最先端の音楽が集うNYで人気を集めるバンドMad Datta のヴォーカルとして活動し、その独特のスタイルで注目を集めているJoanna Teters。ソロ名義では1stアルバムとなる『Warmer When It Rains』の日本盤を6月27日にリリースした彼女に、Mad Sattaとしての活動や長年のパートナーであるCarrtoonsとDrew Ofthe Drewとの関係性、そして『Warmer When It Rains』に込められた思いについて語ってもらった。

 

Joanna Teters Interview

-NY出身で、バークリー音楽大学で音楽を学んだそうですね。音楽的、ファミリー的なバックグラウンドについて教えてください。

父は画家でドラマー、母は作家、兄は演奏家兼歌手で弟はギターリスト兼ベーシストだから、必然的に音楽に囲まれて育ってきたわ。それは本当に幸運だった。私と兄たちはよく両親から楽器やバンドについて学んでいたんだけど、それが私たちのクリエイティブな能力の良い訓練になっていたんだと思うの。両親はいつも家で音楽をかけていていたわ。母はThe Beatles、 Bonnie Raitt、 Aretha Franklinを、父はWeather Report、Tower of Power、Little Featなんかを聞かせてくれた。私の兄は演奏家兼歌手で弟はギターリスト兼ベーシストなんだけど、私と兄はどちらもバークレー音楽学校に通っていて二年間も在学期間が被っていたのよ。家族皆で一緒に演奏する時間は本当に幸せを感じる。そこが家でも、ステージの上でもね。

 

-あなたのハスキーボイスはシンガーとして一つの武器だと思うのですが、誰か参考にしたアーティストはいますか?

色々なヴォーカリストの歌を聴いて勉強してきて、それが今の私のスタイルの基礎になってるわね。特にBob Marley、Aretha Franklin、Meshell Ndegeocello、Sly Stone、Amy Winehouseなんかの歌声は本当に真似したくなるようなものだったわ。

 

-最近気になっているアーティスト、アルバムを教えて下さい。

最近だと、PJ Mortonの『Gumbo Unplugged』、Anderson.Paakn の『Malibu』、Chronixxの 『Chronology』、Daniel Caesarの『Freudian』、Moonchildの『Voyager』、Junglepussyの『JP3』なんかね。

 

 

-アルバムのタイトルトラック“Warmer When It Rains” の意味と、そのコンセプトを教えて下さい。

“Warmer When It Rains” のコンセプトはいくつかあるわ。この曲は昔ボストンに住んでいた頃書いたんだけど、ボストンの春はちょっと変わった天気になることがあるの。とても冷え込んで乾燥したかと思ったら、次の日には雨が降って湿度も上がって暖かくなったりして、そこにインスピレーションを受けたのよ。雨は私によくインスピレーションを与えてくれるわね。そして、この変わりやすい天気をモチーフに、絶望的なシチュエーションでどう希望の光を探すか、っていう意味もこのタイトルには隠されているわ。

 

 

-現在Mad Sattaとしての活動はどうなっていますか?なぜソロアルバムを作ったのでしょうか?

Mad Sattaとしてはもう活動していないのよ。Mad Sattaでは2012年から2016年までリードヴォーカルを務めていたんだけど、2016年の夏からソロ名義で活動を始めたの。その頃からヴォーカルメインの曲を多く書くようになっていて、大所帯のバンド向けの曲はあまり書かなくなっていたし、大きなバンドをマネージメントすることが極端に難しくなってきていたのもあって。エネルギーもお金もかかるし、メンバー同士で目指す音楽の方向性が変わり始めていたしね。私はもっと小さなチームで、自分の新しいアーティスト性を成長させたかったから個人で活動することを選んだの。

 

-今回のアルバムに参加しているTed MorcaldはMad Sattaのギタリストで、ベーシストCarrtoonsとその一派Al Jones、Noah Barker、Itamar、Gov-Ariなどが参加していますね。

そうなの、Mad Sattaのメンバーの中ではドラマーのZane West 、ベーシストのBen Carr(Carrtoons)、ギタリストのTed Morcaldi の三人がこのプロジェクトにも参加してくれたわ。Carrtoonsとは、もともとベースとヴォーカルのデュオとして2010年から一緒に活動していて、それから8年が経ってプロジェクトがバンドになってもソロになっても彼は誠実で、クリエイティブで、才能に溢れた情熱的なビジネスパートナーよ。私たちは一緒に成長して、お互いを刺激し合いながら才能を活かして世界にポジティブな変化をもたらそうとしているの。今の世の中には自身の弱さ、透明感、美しさ、そしてコミュニケーションや結実した愛を全てさらけ出せるようなアーティストが必要なのよ。

 

 

-今回のプロデュースにはCarrtoonsの他にDrew Ofthe Drewが参加していますが、なぜ彼を選んだのでしょうか?あなたはBraxton Cook らと共に2017年にDrew Ofthe Drewの『Drewbix Cube』でコラボされていますが、それがきっかけですか?

Drewと会ったのは2010年、私がバークリーに行ってすぐの頃ね。リハーサル中に私の歌声を聞いたDrewはがすぐに声をかけてくれて、私の歌声を彼のプロジェクトで使いたいと言ってきたの。それは“6 to the 8”という曲で、ベースとトランペット、ビートをフューチャーしながら、ヴォーカルと複雑なハーモニーでD’Angeloのようなヴァイヴスを感じる曲だったわ。この“6 to the 8”以降Drewとは一緒にたくさんの曲を書いてレコーディングしてきたの。Drewはミュージシャン、プロデューサーとしてもとても優れていて、彼と一緒に仕事をしたことがある人は皆彼の影響を受けているんじゃないかしら。

CarrtoonsとDrew Ofthe Drewを会わせたのは2013年頃よ。NYのハーレムでMad satta のアルバム『Comfort』のヴォーカルをDrew のスタジオで彼と一緒に録っている時で、Ben (Carrtoons) もそこに参加するために数日間来てくれたの。彼等はすぐ意気投合したみたいで一緒に活動を始めて、今では凄いプロダクションチームになっているわね。6月15日にはEP 『Back to Brooklyn』も一緒にプロデュースした別プロジェクトとしてリリースしたわよ。彼等がパートナーであることを誇りに思うし、彼等の知識やクリエイティヴィティがここ数年間の私の音楽に大きな影響を与えているのよ。

 

-Mad SattaのアルバムではCurtis Mayfieldの“The Makings of You”をカバーされていましたが、『Warmer When It Rains』は全てオリジナルですか?

ええ、全部オリジナルよ。

 

 

-Mad Sattaの『Comfort』と『Warmer When It Rains』で何か意識した違いがあれば教えて下さい。

私にとって一番大きな音楽的違いはホーンがあるかないかね。あとプロジェクトに対する取り組み方もだいぶ違ったわ。 『Comfort』 はバンドのみんなでボストンのスタジオでセッションすることから始まって、初めて体験するメジャーなレコーディングで色々なことを学びながらだったの。『Warmer It Rains』もソロ名義では初めてのアルバムだけど、『Comfort』以来積み重ねて来た経験があったから落ち着いてアプローチ出来たわね。

 

 

-このアルバムの歌詞を書くうえで心がけていたことはなんですか?

作詞という意味でもこのアルバムはここ数年の集大成よ。“Memories Remain”と“Since Monday”は2013年に作ってMad Sattaとして発表したんだけど、その後のソロライブでも歌い続けていて、ファンのみんなのお気に入りの曲でもあったわ。この時代の曲のほとんどは失恋や自分の内面に見える世界についてのものが多いわ。反対に“Ride with You”や“Midnight”では友情、力や愛についての曲よ。そして最後の曲“So Easy to Love”では、ポジティブでこれから始まる新しい愛について歌われているの。

 

『Warmer When It Rains』で一番聞いてほしい部分はどこでしょうか?

一番聴いてほしいポイントは各曲の洗練された無駄のないサウンドね。最後まで妥協せずに、全ての曲が最高のものに仕上がっていると思うわ。“Memories Remain”や“Since Monday”など何曲かは最終レコーディング前に何回かプリプロを録ったんだけど、そうすることでその曲のベストなヴァージョンを見つけることが出来たのよ。レコーディングして何回も聴き直しながら、その曲の持つ意味、意図を明確にして完璧になるまで、余計な脂肪分をそぎ落としていったわ。全ての曲が、その一曲だけで十分満足感を与えられて、なおかつヴォーカルと現行のポップスシーンでもよく使われる表現をフィーチャーしたものを作りたかったの。ただのジャズ/ソウルに落ち着いてしまうような曲ではなく、ヒップ・ホップ、R&Bファン達の耳にも残って、ポップ・ミュージックとしても十分評価をされるような曲ができたと思うわ。