Hiatus Kaiyoteを生んだメルボルン出身の7人組コレクティブ、Leisure Centre(レジャー・センター)。同バンド名義としては1stアルバムとなる『Mind Full』を9月4日にリリースした彼らに結成の理由やiPhoneアプリ「GarageBand」を使った独特の楽曲制作プロセスについて聞いた。

Leisure Centre Interview

ーメルボルンでHugh RabinoviciとAudrey Powneを中心に結成されたそうですが、いつ、どういうキッカケで結成されたのでしょうか?

このバンドの前身でもある「The Do Yo Thangs」の結成は2011年だね。僕は当時作曲と作詞に没頭していて、すでに何曲もストックがあったからその表現の場として新しいプロジェクトに着手したいなと思っていたんだ。そこで別のバンドでも一緒に活動していたAudreyと新しく二人でバンドを組むことにしたんだ。僕らはどちらもErykah BaduやD’Angeloの音楽を敬愛していて、共通点も多かったからすぐに決まったよ。

 

ー2016年にリリースしたデビューEP『One Plus One』は「The Do Yo Thangs」名義ですが、何故バンド名を「Leisure Centre」にしたのですか?

「The Do Yo Thangs」っていうのはアフリカ系アメリカ人の中でのスラングでもあるんだけど、それをオーストラリア人である自分たちが使うのは少しズレているかもと思って変えたんだ。それで今の名前である「Leisure Centre」に変えたんだよ。このバンド名は僕が育った郊外の風景が発想の元になっているんだ。とても楽しい時間を過ごした懐かしい風景が思い起こされるし、今のバンド名の方がより僕らに合っていると思う。「Leisure Centre」に名前を変えてからはこの『Mind Full』が1stアルバムになるね。

 

 

ーメンバーについて、それぞれの経歴と担当パートを簡単に教えてもらえますか?

僕、Hugh Rabinoviciはメルボルン生まれのドラマーで、作詞とボーカルも担当している。ドラマーやパーカッショニストとしてのスキルはヴィクトリアン芸術大学やインドの芸術大学であるヴァージナラカラヴェディで即興音楽を学びながら身に付けたんだ。今はアーティストとしてメルボルンの「HopeStreet Recordings」というレーベルと、作詞家としても「Native Tongue Publishing」と契約しているんだ。

ボーカルとしてフロントに立っているAudrey Powneは、ファンクデュオ「Au Dré」のメンバーとしてもメルボルンで広く知られているね。力強く、ソウルフルな歌声とステージ上での圧倒的な存在感が特徴さ。また彼女はトランペット奏者としても有名で、Vince JonesやLeroy Jones、最近では「Melbourne International Jazz Festival」で伝説的なサックス奏者であるMaceo Parkerとも共演しているんだ。伝統的なジャズ音楽と現代ポップスを混ぜ合わせた、痺れるようなライブパフォーマンスは彼女にしかできないよ。もちろん作曲もこなせるし、今や彼女はメルボルンのシーンには欠かせない存在になりつつあるよ。

 

 

James Bowersはメルボルン出身で、数え切れない程のバンドで演奏してきた優秀なキーボーディストだよ。ベースのTom Pettitはメルボルンのソウルバンド「Saskwatch」のメンバーとしても有名だね。ギターのDarvid Thorは将来有望なミュージシャンで、ソウルバンド「The Cactus Channel」としての活動で知られている。Jamie Lee Fanning、Tiaryn Griggs、Maddie Ottoの三人はボーカルを担当だね。Tiaryn とMaddieの二人は今回のレコーディングには参加してくれたけど、今は彼ら自身のプロジェクトに集中している状態だね。代わりにLauren Brydieがメンバーに入ってくれているよ。

 

 

ー所属するHopeStreet Recordingsについて、どんなレーベルか、どういうキッカケで契約したかを教えてください。

HopeStreet Recordingsは自身もアーティスト活動をしているBob Knob とTristan Ludowykが、2009年にメルボルンのブランズウィックで立ち上げたレーベルだよ。僕は彼らのレーベルの最初の作品からファンだったんだよ。僕らのライブを観たディレクターのBobから声を掛けてもらったのがきっかけで一緒に仕事をするようになったんだけど、とても光栄なことだよ。HopeStreetのメンバーはとても協力的で、音楽制作への情熱と信念があるんだ。だから契約のオファーをもらった時も迷わずサインした。レコーディングスタジオも家から近いし最高だよ。

 

ーBob Knobは今回共同でプロデュース、ミックスも手掛けていますよね。彼について詳しく教えてください。

プロデュースとミックスという作品作りにおいてとても大事な部分を担ってもらっていることからもわかると思うけど、Bobはスタジオワークには欠かせない存在なんだ。僕は制作中、細かい部分にこだわりすぎて全体的な方向性を見失いかける時があるんだけど、そんなときBobは僕がプロジェクトの全体像を取り戻す手助けしてくれるんだよね。ミックスとプロデュースはもちろん、Bobは最高のベースプレイヤーでもありHopeStreetのクリエイティブディレクターでもあるんだ。

 

ーHopeStreetも然り、メルボルンのシーンは盛り上がっていそうですね。

そうだね!メルボルンの音楽は力強く、刺激的なんだ。毎晩どこかで必ずショーがあって、フェスやツアーも四六時中行われている。どのバンドも皆素晴らしい音楽を演奏していて、とても影響を受けているよ。それにメルボルンのシーンはお互いに協力的だし、仲間意識が強いんだ。

 

ーさて、アルバム制作についてお聞きさせてください。楽曲制作のプロセスを教えてもらえますか?

曲はほぼ全て僕がiPhoneアプリの「GarageBand」を使って作曲している。たまにギターを使ったりもするけどね。大体は夜中にアイデアが浮かぶことが多くて、川のほとりでキャンプをしている最中に曲を書いたこともあったよ。そうして出来た曲をデモ音源にしてからバンドメンバーに送るんだ。そのあとメンバーで集まって、ベースラインやギターフレーズなんかを決めた後、メンバーに各々のパートを数回だけ演奏してもらうんだ。それを僕が何週間かかけて聴いてみて、気に入った部分を集めていく。ドラムから始まり、キーボード、ギターとベース、リードボーカル、バックボーカルを順番に合わせていって、完璧なハーモニーを探していくんだ。これをミックスしなくちゃいけなかったBobには同情するよ(笑)。

 

ー今回のアルバム制作にあたって影響を受けたアーティストはいますか? 同じオーストラリア出身の「Hiatus Kaiyote」からの影響はあるのでしょうか?

もちろんHiatus Kaiyoteはよく聴くよ。AudreyはNai Palmの大ファンであり、友人でもあるしね。でもこのアルバムに関しては彼らからの影響はあまりないかな。このアルバムはLittle Dragon、Frank Ocean、The Internet、Anderson .Paak、Solange、Michael Jackson、Stevie Wonder、Erykah BaduやD’Angeloといったアーティスト達からインスピレーションを得たんだ。

 

 

ーどんなサウンドを目指したのでしょう? Erykah Baduの『Worldwide Underground』の影響を感じたのですが。

今回のアルバムでは様々なサウンドの融合を目指したよ。フューチャー・ソウルやオルタナティブR&Bのサウンドに加え、エレクトロやファンクの要素も取り入れた。それこそまさにErykah Baduのようにね。『Worldwide Underground』と比べられるのは嬉しいよ。僕はこのアルバムの大ファンだからね。

 

 

ーアルバム『Mind Full』のコンセプト、タイトルに込められた意味について教えてください。

このタイトルはちょっとした言葉遊びになっているんだ。Mindfulnessという単語を少しいじったんだよ。この『Mind Full』は、自分の将来への不安や過去への後悔なんかで心が騒がしくなる中で、いかにしてMindfulness=心の安らぎを探すか、ということをテーマにしている。過去でも未来でもなく、今この瞬間を精一杯生きるべきで、それこそがMindfulnessなんだってね。このアルバムのアートワークは、そんなせわしない精神を表現したものさ。

 

ー今後の活動予定、今後やってみたいことなどがありましたら教えてください。

僕らはこれから初のオーストラリアツアーを迎えるところなんだ。これからはもっと活動の場を広げていきたい。ツアーが終わったら次のアルバムに向けて動き始める予定だ。他のバンドともコラボしていきたいし、バンドとしてもっとたくさんの曲を作っていきたいね。

 

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