過去最高の相性を見せたバンド・メンバーたちとのファミリー的な結束

全国4都市を周る「Nao Yoshioka Japan Tour 2021 -Rising After the Fall-」の全公演が、11月16日(火)に行われた大阪公演をもって無事終了した。東京公演(10月28日(木):渋谷WWW X)の様子は前回リポートした通りだが、今回はトランペッターの黒田卓也が加わった大阪公演の話も含めて、Nao Yoshioka本人の発言を交えながら本ツアーを振り返る。
宮川純(キーボード/オルガン)、菅野知明(ドラム)、井上銘(ギター)、ザック・クロクサル(ベース)という、「アメリカでも出来なかったことが日本で出来ている」と言うほど相性の良いバンドと初めて顔を合わせたのは、昨年12月のブルーノート東京公演にて。パンデミックでライヴをできない時期が長く続き、いろいろと行き詰まっていた中で見つけたのが彼らだった。キッカケは、バンマスを務める宮川純との出会い。昨年、東京で緊急事態宣言が発令される中で行ったライヴ・ストリーミング・セッション「Liberate Session」で、宮川とドラマーのFUYUとともに配信ライヴを行ったことによって新しい扉が開けたという。

「配信ライヴでは準備期間がなくて、当日リハで本番みたいなスケジュールの中でふたりが来てくれたのですが、その時に(宮川)純くんが本当に音楽を理解しようと思って来てくれていることが彼のプレイから伝わってきて、ここまで音楽に向き合う人なんだと感じて。純くんは同い年だし、ファミリー感も強くなってきて、私がアイディアを出したらすぐにレスが来て、こうやってライヴ・プロダクションって強くなっていくのかと思いました」

Jun Miyakawa

そんな宮川のFacebookで偶然写真を見つけ、演奏動画をチェックしてコンタクトを取ったのが井上銘だった。また、菅野知明とは、Naoがニューヨーク留学中(2009〜2011年)にギグを行った仲。日本在住のザック・クロクサルとは、アーロン・アバナシー来日時にSWEET SOUL RECORDSのスタジオにて行われたリハーサルでプレイを見たことがきっかけだったという。

「(井上)銘くんのギターって真実の音というか、誰かの真似ではない自分の音を追求している人だから彼とやりたかった。そしたら大正解。彼がバンドにいることでピースがハマるみたいな感覚があったんですね。癒しであり、ムードメイカー。トモ(菅野知明)さんは、ニューヨークにいた時、イースト・ヴィレッジにあるブルース系の小さいお店で黒人のおじさんの横でドラムを叩いていたのを見ていて、ハーレムにあるバーベキュー屋さんでやった投げ銭ギグみたいなのを一緒にやってからの付き合いです。ザック(・クロクサル)のベースも凄く素敵で、メンバー全員に言えることなんですが、音に説得力というか主張がありつつも、調和を大事にするプレイヤーなんですよね」

バンマスの宮川純とはミーティングの機会に好きな音楽を聴く時間も設け、アレサ・フランクリンの教会コンサートを収めたドキュメンタリー『Amazing Grace』のワンシーンを爆音で流したりして、MCとキーボードとの絡み合いなどを研究したという。それほど結束の強いバンドに、大阪公演では黒田卓也のトランペットが加わったわけだ。

Takuya Kuroda

「東京公演ではライヴ・プロダクションの最終形態を出そうとしていて、大阪公演ではそれをどうやって崩し、100点を120点にするかというモードに入っていました。黒田さんに入ってもらったのは、「Nobody」「Love is the Answer」「All in Me」の3曲。「Love is the Answer」ではイントロで黒田さんが吹いて私が歌い始めたのですが、ソロのパートでは黒田さんの次に純くんの時間があって、本当はそれに続いて私が(ディアンジェロの)「Chicken Grease」のフレーズを歌って曲を締めるはずが、純くんのソロが盛り上がりすぎてそのまま終わるという(笑)。音楽的に、これ以上はもう上に行けないくらい行ききってしまって…現場ではみんな“やっちまったー”って顔をしてましたが、あれはああなるべきだったんだって思いましたね」

結果オーライなハプニングとしては、客席からは全く気づかなかったが、東京公演で「Freedom & Sound」を歌い出す前に目眩いがして倒れそうになり、急遽ステージから離れたところを井上銘がギター・ソロでフォローしたという話もある。

「今回のツアーでは銘くんに凄く助けられた。彼はイレギュラーな状況になるとスイッチが入る人なんですよね。ステージから離れた時、銘くんがひとりで弾いてくれているギターの音を聴いた時にも感じたのですが、彼のギターには闘いのエネルギーよりも愛情が感じられて、心が常にファイティングポーズの自分をポジティヴなところに持っていってくれるんです」

視覚的な要素も加えながら強化したライヴ・プロダクション

Nao Yoshioka

本ツアーのセットリストは、『The Truth』(2018年)と『Undeniable』(2019年)および最新EP『Philly Soul Sessions』(2021年)からの曲をメインにしながらも、『Rising』(2015年)から「Love is the Answer」「Nobody」および同作ボーナス・トラックの「Rise」を加え、黒田卓也との共演も想定してファンクのセクションが強化されていた。同期(演奏)を使わずバンドでなければできないアレンジメントをこれまで以上に追求し、ハプニングが起こることもむしろ歓迎くらいの気持ちで、R&B然とした甘く切ない部分は残しつつ、Naoの攻撃力の高い部分を前面に出していくことを心掛けたという。

「今年4月の配信ライヴ(「Fearless Strength Faith Joy」)や6月のビルボードライブ大阪のライヴではR&Bの要素を重視して、トラックの音圧も結構高く、自由度があまりなかった。だから、そうしたR&B的なキメキメなところもありつつ、ミュージシャンが自由に自分の音を出して長いソロをやったりするセクションも作りたかったし、そうした中で自分の歌ぢからを見せたかったんです。あと、これまで四つ打ちをやりたいと思ったことが一度もなかったのですが、「All in Me」では四つ打ちをやりたくなって。あまりハウス感のないソウルフルな四つ打ちですね。体が勝手に動き出して、永遠に同じグルーヴを聴いていたい、音楽でトランスするみたいな感覚は自分もライヴに行った時に心地良いですし」

今回のツアーでは「全く同じライヴ・プロダクションをアメリカに持っていっても絶対に負けないものを作るのが目標のひとつ」 ということで、振りなどのステージ・パフォーマンスにも力を入れていた。それは、ダンスしながら歌うというのではなく、あくまで曲に沿った動き、歌に魅力を加えるための表現の追求だ。

Nao Yoshioka

「去年の8月くらいから振り付けを習い始めて、今年4月の配信ライヴで初めて振りを決めて歌いました。恥ずかしいし、失敗するのは承知で。その後、映像を見て反省して、6月のビルボードライブ大阪のライヴでも動きを試してみて、少しずつ恥ずかしさがなくなってきました。それをやり始めたキッカケはニューヨークでBIGYUKIさんのライヴを観てからで、鍵盤を弾いていること以上に体から音が出ているなと思ったんです。視覚が聴覚のヘルプをして音が倍増して“見える“んですね。音や歌は感じてるだけじゃなくて、ある程度見ている要素も大きいと思っていて。例えばH.E.R.のパフォーマンスも、振りが決まっているけど決まっていないように見える。視覚的にも音が見えるってことを完全に狙ってやっている。それをやりたかった。振り付けの先生には、“ハイハットに反応して体を動かすと、お客さんはドラマーがハイハットを叩いていることに気づくし、キーボードのリフに反応して体を動かすと鍵盤奏者が何を弾いているかに気づく…だから、あなたは指揮者なんですよ“と言われて。そうすると歌い手だけじゃなく、プレイヤーにも目がいくんですね」

海外のR&Bアーティストに似せるためではなく、視覚的な要素と連動させて、より高いライヴ・プロダクションに近づくための振る舞い。矛盾した言い方になるかもしれないが、今回のステージから海外のR&Bコンサートぽさが感じられたのであれば、ヴィジュアルも含めた表面的な部分ではなく、ライヴ・パフォーマンスの本質を追求したことによって模倣ではない“本国ぽさ“が滲み出ていたのかもしれない。

多様性を祝福しながらファンクを追求して進化するNao Yoshioka

Nao Yoshioka

MCのテンポや間合いからも成長が感じられた。そして、彼女自身を含めた様々な意味でのマイノリティの人たちのために音楽を作り、歌いたいという気持ちがより強くなったことで、ステージ上で話す言葉にも説得力があった。

「2020年は本当に心が折れて、人に認めてもらえないことで頑張れないとか、それを受け入れるのに時間がかかりました。今までは結果主義だった部分もありましたね。でも、人に認めてもらうためではなく自分のプロダクションを成長させることに目を向けて、私の才能がどこまでいけるのかチャレンジしたいという軸に変わってからの自分の発言や行動は凄くパワフルになったと思います。今の時代、自分が何をどう感じて生きるかみたいなところでジャッジされるし、考え方の違いで友達だった人が友達でなくなるということも体験している。特に去年から同じことを感じ始めている人も多いと思いますが、私はそうした違和感を10代の頃から感じていて。デビュー当時からずっと同じことを言っていますが、だから“多様性を祝福しよう“という「Celebrate」のような曲を歌っているんです」

今回のツアーで初披露された新曲「Tokyo2020」にも似たような思いが反映されている。フィラデルフィアで活動するキリアム・シェイクスピアのコーリー・バーンハードが昔作っていたスウィートなメロディにNaoのリリックを乗せた曲で、これはシングル・リリースも予定しているという。そして、2022年1月18日にはブルーノート東京で「Tokyo Funk Sessions 2020」が行われる。宮川純がバンマスを務めるバンドのメンバーは今回のツアーとは若干異なるものの、凄腕の面々を揃え、ホーン隊も加えてファンクを追求し、さらなる高みを目指す。

「ブルーノートでやるからには、よりコンセプチュアルな部分が欲しいなと思って。自分の中にはR&B、ネオ・ソウル、ファンクなどの要素があって、今回のツアーでもそれらの要素が感じられるライヴを意識していましたが、自分のファンクネスは強みだと感じているので、次のブルーノート公演ではそんなファンクネスをより広げたらどこまでいけるんだろう?ってところを目指しています。素の自分は気性が激しい部分もあるから(笑)、そことファンクのエネルギーが合ってる。だからといって、ジェイムス・ブラウンやアレサ・フランクリンが歌うようなファンクをそのままやるわけではないですけどね」

 

Nao Yoshioka Tokyo Funk Sessions 2022

・メンバー
Nao Yoshioka (vo)
Jun Miyakawa (p, music director)
Zak Croxall (b)
Fuyu (ds)
Satoshi Yoshida (g)
Yusuke Sase (tp)
Tomoaki Baba (ts)
Shigetaka Ikemoto (tb)

・日程
2022年1月18日(火)

・時間
[1st show] OPEN 17:00 / START 18:00
[2nd show] OPEN 19:45 / START 20:30
※2nd showのみインターネット配信(有料)実施予定
※アーカイブ配信視聴期間:2022年1月21日(金)23:59まで
※アーカイブ配信の内容はライブ配信と異なる場合がございます。予めご了承ください。

・会場
Blue Note Tokyo(〒107-0062 東京都港区南青山6-3-16)

・ミュージックチャージ
[会場でのご観覧]
¥7,000(税込)
[配信でのご観覧]
一般:¥3,000(税込)
Jam Session会員:¥2,000(税込)

・チケット
2021年11月28日(日)12:00 Jam Session会員電話・Web予約開始
2021年11月30日(火)12:00 一般Web先行予約開始
2021年12月3日(金)12:00 一般電話予約開始
http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/nao-yoshioka/

・問い合わせ
Blue Note Tokyo TEL:03-5485-0088

 

Nao Yoshioka Tokyo Funk Sessions 2022